スリッパ島

ブログの題名になっているスリッパ島は存在するらしい。『マイマイ新子と千年の魔法』の舞台山口県防府市の海岸に出ると向島という、今では埋め立てで地続きになった島があるのだけど、そこから瀬戸内海の沖合を眺めると、スリッパの形をした島が見えるのだそうだ。
マイマイ新子』が上映されるとき、『アリーテ姫』を一緒に上映活動をしてきたSさん経由で監督から「今回はSさんたちの出番がないように頑張ります」との伝を聞かされました。私はロードショーで成功するに越したことはないしと、友人に勧めつつ、自分ではこっそり映画を観に行くにとどめていました。スリッパ島から対岸を眺めるように、と書くと偉そうですが諸事情がありました。

3ヶ月を越えるロングランのあと、少し間が空いてしまいましたがシネマ・アンジェリカで上映が続くのは喜ばしいことです。宣伝は出来るところから、私も自分の引っ越し案内も兼ねて知人にお知らせしたいと思っています。それはとは別にウェブでのお知らせです。どうやったら興味を持ってもらえるか、こちらもついつい考えてしまいます。『マイマイ新子と千年の魔法』はとてもセンシティブで分かりやすい映画だと思いますが、凝った作りもしていて誤解を受ける面もあります。そういった意味で、まずは映画ファン…それもエリセやフェリーニのファンにはとても響くと思う。また佐々木昭一郎の『川の流れはバイオリンの音』のように、物語性は最小に映像世界に没入して心揺さぶる作品が好きな方にはファンになって貰えるのではないでしょうか。ノスタルジーとは関係なしに、子供が世界を認識していく、意識が外側へ広がっていく一瞬を見て取れる『マイマイ新子』には大きな可能性があると思います。
個人的には荷が重くとても伝えられそうもないのだけど、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』や、ジョン・セイルズ監督でジェニ・コートニーが何ともかわいらしいの『フィオナの海』や、佐々木昭一郎の『川』三部作が好きな友人には声を掛けていきたいです。ピンポイント過ぎですが、本質的なところでは間違ってないと思うので。

ではまた。

横濱マイマイ

横浜には「横浜ハーバー」とという不思議な響きを持つ銘菓があります。横浜のお土産といえば、ありあけ〜のハ〜バ〜♪のあれですね。ただ今まで食べたことがなくて、せっかく横浜に『マイマイ新子と千年の魔法』を観に行くのだから、これをお土産にしようと思いました。横浜ハーバーは当時横浜に住んでいたころ良く耳にしましたが食べる機会はなく、当時製造元だった製造元の有明製菓が不動産投資に失敗し1999年に倒産したというニュースを良く憶えています。その後引っ越したこともあり、すっかり忘れていたものですから横浜開港150周年記念の博覧会近辺でCMがたくさん流れたときにはびっくりしたものです。ウィキペディアあたりを参照にすると、有明製菓が倒産した後、それを惜しんだ元従業員や市民により復活運動が起こり2001年に有限会社有明製菓(現・株式会社ありあけ)立ち上げたのだそうです。


こういう動きを私はもうひとつ知っていて、それは大分県の銘菓「ざびえる」というフランシスコ・ザビエルに因んだお菓子のことです。ざびえるは老舗の長久堂が1962年から売り出した看板商品でしたが、長久堂は経営が悪化し2000年に倒産しました。これまた多くのファンのいたお菓子ですから復活が望まれ、長久堂の元社員が中心となりざびえる本舗を立ち上げ、当時の味を再現し、2001年から販売が再開されました。私は長久堂の瑠異沙というバイオレット・リキュールを加えた白あんを包んだお菓子が大好きだったので、この復活に歓喜したひとりです。

ありあけハーバーの件もそうですが、関係者やファンや市民が、何かを支えることが出来るってことは、頭の片隅にあっても良いと思います。本当は良いものが、そのまま世間に受け入れられて、末永く愛してもらえるのが良いのでしょうが、それは時代の雰囲気だったり経営上の都合だったりでうまく行かないことあります。それは仕方ないことですが、ちょっとでも助ける努力が出来る、そんな余地が世の中にあるってことは私も忘れないようにします。



さてさて『マイマイ新子と千年の魔法』の3度目を観てまいりました。18:30の回、10名程度と寂しい感じでしたが上映環境は思った以上に良く、もう一回観たい方や、ご新規の方はこの機会を逃すのは勿体ないです。2月26日(金)最後となりますが、ぜひ足を運びましょう。


横浜ニューテアトル
http://yokohamanewtheatre.web.fc2.com/


参考
ありあけハーバー http://www.ariakeharbour.com/
ざびえる本舗 http://www.zabieru.com/


横濱ハーバーは無事買って帰り、おいしく頂きました!

映画の興行情報

2009年(平成21年)全国映画概況
http://www.eiren.org/toukei/index.html

映画の公開本数が洋画・邦画併せて762本。うち57作品が興収10億円以上。全体の興収が約2000億で、10億以上稼いでいる57作品の合計がざっと1400億…7割以上なわけですね。それでもって興収の高い作品というのは、やはり宣伝が多くメディアの露出が多い作品が多いじゃないでしょうか。こうやってみると『サマーウォーズ』頑張ったな、って思います。
いや、ちょっと気になって検索してみただけで、このデータで何が言いたいってわけでもないです。ある意味順調だと思ったくらいで。
そうだなぁ。映画の入場料がもう少し安くなって、入場人数が5倍くらいになったら、個人の選択がもう少し増えるんじゃないかと。


ちなみに平均ってのは怖くて、私ですら最盛期年間70〜80本近く映画館で観てましたから、実際映画館に足を運んでいる人はどれくらい居るのかな。

今日の名言

1800円のアニメ映画を10回見てアニオタ気取ったところで、1000円のマキシ100枚買うアイオタには敵わない。
http://twitter.com/aniota/status/9132185529

そうですよねー。あの購買力には負けます。

アニメのキャラソンCD大量買いで積んでる風景はたまに見るけど、DVDだとさすがに無いか。DVD1枚辺り1000円にすれば大量買いする人いるかな。
http://twitter.com/aniota/status/9132341372

一時期、『アリーテ姫』『ユンカース・カム・ヒア』のDVDなら10枚くらい本棚に刺さっていたり、『アリーテ姫』のサントラが箱で転がってたりしました。
確かに『マイマイ新子』のサントラを10枚くらい買って配るのは有効かも(笑)

映画とイデオロギー

あんまりこんな事は書きたくないのだけど。

この国を、まず精神的に豊かにしたい。大人たちが、子供だった頃の感覚を、手の平や足の裏に取りもどすべき時が来ている。「誰もが、みんな子供であった」ことを思い出せれば、思いやりもゆとりも生まれます。

そんな空気を取りもどす力が、この映画にはある。この国を豊かにするために、『マイマイ新子と千年の魔法』の力を、どうか貸していただきたい。そう思って、私は、この映画を応援してきました。
監督のためでも、ましてや製作委員会のためでもない。この国のためです。

冷笑されてもいい。まだ、終わっていません。これが最後のお願いです。まだ、僕もみんなも、本気だしてないですよ。
http://mega80s.txt-nifty.com/meganikki/2010/02/post-f1fc-7.html

なんかとても間違っている気がする。ちょっと許容できる考え方ではないです。
映画がその時代時代でプロパガンダに使用されたのは周知の事実だと思う。これは良いプロパガンダで、あれは悪いプロパガンダとでもいうのだろうか。
個人的にはオフ会でも開いた方が健全だと思う。

特殊で特別な何か

マイマイ新子と千年の魔法』が唯一無二な作品なのは分かっています。ですが公開宣伝会議でも言われていたとおり、良い映画があったとしてその映画を伝える方法が絶対的に欠如しています。テレビで紹介される映画は、その系列が出資していたり、新聞の夕刊の映画評はそこそこ参考になるものの絶対的に文字数が足らず、映画雑誌に関しては読んでいる人が限定される。そういった現状の中で傑作や佳作が埋もれていく例は枚挙に暇がありません。たとえば『マイマイ新子』を強く推す人は『ユンカース・カム・ヒア』や『アリーテ姫』を観ているのでしょうか。
今ロードショウ中の『マイマイ新子』は当然大事です。でも私にとってはこれらの作品と過ごしてきた日々も同じように大事です。ですから、もし『マイマイ新子』を色々な面で支えようと思っている方がいらっしゃるのなら、比較的に入手の可能な『アリーテ姫』や『ユンカース』や『アイアンジャイアント』なども視野にいれ、週末にでも観ては如何でしょう。


それとついこないだ2007年公開の『クローンは故郷をめざす』を映画館で観ました。監督の中嶋莞爾さんは公開時にヒットしないこの作品を担いで全国の映画祭を回り、やっとDVDのレンタル開始が決まったので東京にもどって最終上映を行ったとのことでした。

http://clone-homeland.com/
とても優れた作品で、私はこの映画が下高井戸で上映されるまで知らなかったのを恥ずかしく感じました。監督は下高井戸の上映の時のトークショウで次のようなことを仰っています。
「ガッチリと観客の心に食い込む映画を作りたい」
「昨今の映画は文化ではなく情報である」
「ライブではなく、残る作品にしたい」
これは『マイマイ新子と千年の魔法』に通じるのではないでしょうか。『クローンは故郷をめざす』は3年目の2月5からやっとレンタルが開始されたそうです。

でも私は特殊で特別な何かを欲しているわけではありません。自分の感性に合う映画が身近にあって欲しいだけです。そういういった世界を求めるのは贅沢なのかもしれないな、と心のどこかでは思っていますが…。


ではまた。

10年前と今と。

マイマイ新子と千年の魔法』公開宣伝会議の場で話を聞いてみて、考えるところがたくさんあった。特に『マイマイ新子』が作品単体ではなく、その現象そのものが作品になりつつあると言ったことは、映画を情報ではなく文化として扱う第一歩だと思う。別の機会に書きたいのですが、ある監督が「昨今の映画は文化ではなく情報である」と舞台挨拶で話していて、では文化とは何かと考えて見えると、それはその作品が自分のライフスタイルにどれくらい影響を与えるのかで決まるのではないかと思いました。


それで思い出したのですが、私が上映会をやっていた10年前にこう聞かれたことがありました。

−これから濱田さんの人生でまた素晴らしい映画と出会うことと思いますが、もしそれがまた今回と同様な不幸にあったらどうされますか?
濱田さん「『ユンカース』は完成度からいえば、メジャーな映画です。ジブリ作品のそれに匹敵しますし、この作品がお蔵に近い状態にあるのが変なのです。それは観て頂ければ理解出来ると思います。ですから、もし何らかの形で上映会を行なうなら、不幸とは言わなくても自分が観たい作品『ミツバチのささやき』や『シベールの日曜日』なら機会があったら上映会を開いてみたいと考えています。幸、不幸は置くとして、私自身のライフスタイルに合った作品にこれからも接して行きたいと思います。その上で、どうしても我慢出来ない事態になれば、また自分でやるでしょう」
http://sprocket.eek.jp/monthsp/month2000July-3.htm

2000年7月に「シネマ茶屋すぷろけっと」のじんけしさんにインタビューされた時に話したことです。多少、偉そうですが若気の至りですので許して下さい。このあたりは次の機会に書きたいと思います。


このじんけしさんの2000年7月の記事は、他に『アイアン・ジャイアント』と『Gods and Monsters』に関わった「普通の人」のインタビューが載っていて、昨今の『マイマイ新子』の動きが気になっている人は一読すると参考になると思います。
2000年7月号「映画館で観たい」



▲徹夜でDMを封入れするとか、もう体力的に無理だと思う。この時で650枚超。


ではまた。